@m_seki の

I like ruby tooから引っ越し

The dRuby Book. now in print.

The dRuby Book: Distributed and Parallel Computing with Ruby dRubyによる分散・Webプログラミング

RubyKaigi2007でPragDaveと話をしてからずいぶん経ちましたがついに英語版幸福の王子本ことThe dRuby Bookが発売されました。わーい。
しばらく停滞してしまったけど、翻訳者の井上さんが参加して下さってから一気に加速(でも一年以上)して完成しました。私はなにかをやり遂げるエネルギーが少し足りないみたいなのですが、井上さんの力でゴールまで辿り着けました。
井上さんには本当に感謝しています。みんなもして。
Div/Tofuの章がばっさりなくなったけど、代わりにDripが増えています。dRubyと本当は関係のないERBの章も書き下ろしです。

It’s a distributed world. But do you know how to effectively do distributed programming in Ruby? Let renowned Ruby programmer Masatoshi Seki show you how, with dRuby.

http://media.pragprog.com/newsletters/2012-03-21.html

ここにあるQ&Aは私の日本語の草稿を井上さんが洗練させたのちに英訳して下さいました。他にネタもないし、オリジナル版を載せときます。

Tell us about dRuby and what we can do with it.

dRubyは分散オブジェクトシステムです。ちょっと難しく言う(かっこつけて言うと)と、Remote Method Invocationを実現するライブラリです。
あなたのプロセスのオブジェクトを隣のプロセスに公開したり、隣のプロセスのオブジェクトのメソッドを呼び出したりできます。

How can dRuby and distributing programming change the way we develop our apps?

(背景いる?)Webサービスの台頭によって、サービスを利用する、あるいは提供するといったスタイルが一般的になってきました。大きなシステムを作る場合もちょっとしたツールを作る場合にも、そういったデザインを選ぶ機会が増えます。プロセス間通信は身近な問題です。
プロセス間通信の面倒な部分の設計/実装をdRubyが担当しますから、まず、皆さんはシステム本来の設計に思考を集中できるでしょう。そしてしばらくするうちに、あなたは積極的にプロセス間通信を利用するアーキテクチャを選択肢にあげる、あるいは選択している自分に気付くでしょう。

How is dRuby different from other distributed object systems? What's unique about it?

一番の大きな違いは、Rubyという言語に特化してデザインされている点です。ユニークな点は、非常に簡単に(stupid easy?)分散オブジェクトシステムを使い始めることができる点です。
Rubyに特化しているので、Rubyのプログラミングの特徴の多くがdRubyにもあてはまります。例えば、明示的なインターフェイスを記述が不要、自動的にオブジェクトの転送方式を決定する仕組み、ブロック付きメソッドのサポートなどです。これらの特徴がdRubyを非常に簡単なものにします。

You've written a few other libraries - how do they interact with dRuby and what will we find useful about them?

本書の中ではdRubyを糊として、いろいろなライブラリと連携させています。Rindaなどのスレッド間同期メカニズムをそのまま利用してプロセス間を協調させたり、
ERBなど関数的なライブラリをサーバにすることで前処理にかかるコストを削減したり、といった風に。
その他のライブラリと同様に、私のライブラリにも少ないAPIとは対照的な多くの意図を背景に持っています。
それらはAPIのリファレンスを見ただけではすぐに気付けないものです。本書ではライブラリのソースやリファレンスではわからないそういった背景を、dRubyと組み合わせた応用例を観察しながら明らかにします。

If there's one thing we should take away from your book, what would that be?

小さな(シンプルな)ライブラリに隠された、大きな(蘊蓄たっぷりの)背景を持っていってほしい。その結果、あなたのデザインの幅が大きく広がることを期待しています。